いわゆるごく普通と思われた病院(獣医師)を受診した結果、とんでもない誤診やミスが起こる例が数多く見られます。結果的にその病院は普通ではなかったということになります。獣医師の経験、注意深さ、技術、総合判断など、そのどれかが欠けているのです。
腕の良い獣医師は、ミス(過失)の程度が予想される範囲内でとどまり、善後策の対応が素早くできます。
どうしたらその良い獣医師を見極められるでしょうか?
●病院の規模、外観、設備、宣伝文句は参考程度に。
清潔な室内、雰囲気明るく親切に対応、明朗会計、などは、本来あって当然です。
一方、設備と装置が充実していても完全に使いこなされているとは限りません。
エコー、レントゲン、CTなどは機械性能ではなく、画像の判断能力と臨床への適用能力が重要です。
動物病院HPに掲載される診療ポリシーや体制は必ずしも実情と合致するとは限らないので、あくまでも一つの目安と考えるのが妥当です。
優秀で誠実な獣医師は、対応や説明が適切で信頼がおけます。
他方、雄弁でも肝心の要点をはぐらかそうとする獣医師は信頼できません。
(例)
・受付は明るく清潔で掃除も行き届いていても、肝心の手術場や処置室に物品が散乱し、滅菌が不十分のまま手術していては清潔な病院とは言えません。見かけをよくして病院のイメージアップを計っているだけです。
●いつも基本に則って診察や治療を実践していますか?
症状があればその原因を探すために、視診、触診、聴診、そして必要に応じて血液検査やレントゲン検査などを行うのが診断治療の原則です。
特に身体所見では体重、体温、呼吸心拍数などは重要な情報であり、省略すると重大な病気を見落とす危険性があります。
どのような病気であれ、基本的事項は毎回チェックしなければなりません。
良い獣医は、基本的な診察を確実に実践し、勝手に省略はしません。逆に基本をないがしろにする獣医師は注意力や判断力が希薄で、誤診の頻度は増加します。
(例)
犬の腹痛と下痢に対し、触診も聴診もせずに、「悪い物でも食べたのだろう」といって獣医師は胃薬を処方した。
しかし改善せず、1週間後他院を受診した。脾臓と頸部リンパ節は腫大しており、最終診断は悪性リンパ腫と判明した。
●飼い主に対して科学的な思考と治療方針を提示できていますか?
正直で現実的な説明(インフォームドコンセント)をしていますか?
獣医学は確固とした自然科学です。経験だけでなく、診察所見と必要なデータに基づいて診断を下すことができる獣医師は、今後の治療方針を示すことができます。そして、飼い主に考えの根拠を提示できます。
病気を追求し救命しようとする意識があれば、原因がどこにあり、どうしたら病状を治せるか、そのためには何が必要か、その思考は自ずと発生します。
病態を理解できない時、無理矢理に診断をつけて飼い主を納得させる方法は飼い主の不信をあおるだけです。
また、症状を表面的に見て安易に判断したり、思いこみや根拠のない見こみ治療している獣医師は、とんでもない誤診やミスをします。またそれを何回も繰り返します。
治療結果が良ければ途中に誤りがあっても許される、という考え方は臨床医として幼稚であり、飼い主との信頼関係構築にはほど遠い考え方です。
●飼い主の意識や価値観を把握して対応していますか?
飼い主が求める医療内容は、飼い主の意識によって違いがあります。飼い主の社会性や理解力などを承知した上で治療を進めていく必要があります。治療指針を示す相手が飼い主であるため、治療には飼い主の意識を知ることも同様に重要なことです。いわゆる相手を見誤った(過小評価した)場合に往々にして問題が発生します。
●獣医師自身の能力をわきまえた治療を行っているでしょうか?
治療行為は責任の持てる内容であるべきです。能力がない状態で安請け合いしたりやみくもに突き進むことは無謀です。
過去に見たり聞いたりして何となく知っている治療とはいっても、実際に自分がやったことがなければ習得しているとは言えません。また手術はできても術後管理ができなければ正しい手術とは言えません。
最終的に動物を治すためには、自己の能力を知り、できることとできないことの区別を認識すべきです。
●感情の起伏が激しくありませんか?
誰でも、体調が悪い時、疲れている時、気分が滅入る時などは口調が荒く態度も乱暴になりがちです。
しかし仕事上でその感情を相手(飼い主)にぶつけるのはとんでもないことです。
スタッフを怒鳴り散らしたり、イライラして周りの人間に不快感を与えたりするようでは冷静な治療もままなりません。
中心的立場にある獣医師の気分の不安定さはスタッフのミスを発生させる原因にもなります。
スタッフは獣医師の多少の気分変調には目をつぶるかも知れませんが、いつまでも受け止めることはできません。獣医師とスタッフの信頼関係が揺らいでしまうと仕事の質は著しく損なわれ、誰もが仕事に集中できなくなります。
医療者は自分の感情をコントロールする能力を身につけなければなりません。
日常診療でも緊急時でも、激しい感情を抑制しながら沈着冷静な治療を心がけてください。
●一般的な日常会話に違和感がありませんか?
社会性や倫理を備えていますか?
飼い主に横柄な物言いや友達感覚の話し方をしていませんか?
感性や感覚が飼い主側と大きくずれていませんか?
医学のことは判るが世間一般の事は知らない専門馬鹿ではありませんか?
飼い主の気持ちよりも自身の主張を前面に出そうとする獣医師は、治療選択肢の幅がありません。
飼い主を素人として見下す獣医師は自身の技術や知識を過大評価します。他の獣医師をねたんだり誹謗したり見下したりする獣医師も同様です。いわゆる「お山の大将」では視野がせまく、社会性および倫理観が欠如します。
飼い主たちは医学的に素人であるとしても、社会的な立場や人間としての能力は幅があり優れている人がたくさんいます。
飼い主に向かってぞんざいな言葉使いや態度をしめす獣医師は、狭い世界の中で威張っている世間知らずに過ぎません。
そうした獣医師は病気を客観的にとらえる能力が乏しく治療方針も自分勝手になります。
真の治療能力とは、自身にうぬぼれず、技術におぼれず、相手の立場や状況を尊重、理解して対応できる能力です。
(例)
・年長の男性飼い主の犬が受診した。犬は獣医師を怖がって怯えている。
獣医師
「この犬黙っていないね。あんたのしつけ悪いんじゃない?」
「ほんとにちゃんと薬飲ませた?治らないのはおかしいな。」
男性飼い主(内心では)
「愛犬を診てもらう獣医師と思って敬意を払っていたが、この非常識な態度には耐えられない。二度と受診しない。」
●職員の士気は高いでしょうか?
獣医師以外の職員の働きぶりは、病院の状況と獣医師の意識をよく反映します。良い獣医師と共に働く職員は、適度な緊張感を持ち、のびやかで溌剌とした意識で的確に仕事をこなします。そして常に状況に即した判断で動くことができます。これは、獣医師と医療スタッフとの間に意志疎通と信頼関係が構築されている証拠です。
逆にスタッフが獣医師の顔色をうかがって萎縮したり、緊張感を欠いて無駄話ばかりするようでは困ります。
そもそも職員の仕事や行動心理を理解できず信頼を得られない獣医師は、患者と飼い主のことを十分理解できるとは到底思えません。飼い主の意向を汲み取った十分行き届いた医療を期待するのには無理があるでしょう。
●院内獣医師間の意思疎通が図られていますか?
院長以下複数の獣医師が勤務する場合、能力と責任にはかなりの違いが出ます。著名な病院であっても獣医師全員が一様に有能とは限りません。各獣医師が自分の診療に責任を持つ姿勢があるかどうか、また、他の獣医師が診察した患者の病態をどの程度理解しているか、などは、院内の教育方針と連絡体制を如実に表します。
有名な大病院や優れた専門病院であっても、獣医師間の意思疎通が不十分のままではきめ細かな治療や集中治療に不備が生じます。責任所在があいまいになるおそれがあります。
●院外獣医師との信頼関係や情報網が構築されていますか?
狭い殻に閉じこもって治療の幅が狭まっていませんか?
他施設の獣医師と交流し情報交換することで自身と他獣医師の能力知識を知り、相互に不足を補うことができます。一人では判断できず悩む症例も早い段階で紹介するか治療方法を教れば必ず展望が開けます。
相互に信頼し個人能力と地域医療全体の質が向上すれば、獣医師も飼い主も安心できます。飼い主は、獣医師一人ですべての病気を治せるとは考えていません。最善の治療を選択して欲しいと考えているだけです。
・「途中で治療が行き詰まったが他へ紹介すると治療の嘘がばれてもう戻ってこなくなる。評判と売り上げに悪影響が出るからこのまま診断つかずとも騙し騙し進めてみよう。」
これは飼い主に対して明白な背信行為で、動物を虐待することになります。
●飼い主の指導や教育(情報提供)に積極的でしょうか?
飼い主は獣医師の指示に盲目的に従えばよいとする考えは通用しません。
飼い主が正しい知識と技術を学ぶことは獣医療全体の向上に必要です。その目的のための飼い主教育は、獣医師の重要な仕事のひとつです。
積極的に飼い主に情報提供しようとする獣医師は、知識が豊富で総合判断に優れています。飼い主を指導することは獣医師自らが学ぶことにもなります。
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