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行政の取り組みについて

 
 獣医療を向上させるために飼い主と獣医師が努力することは当然のことですが、同様に、あるいはそれ以上に、関係団体や行政機関の取り組みは重要です。
 個人とは異なる手段と力を発揮して獣医療改善に取り組むことが可能です。
なかんずく、行政機関の果たす役割はもっとも重要です。
 
 動物に関係する行政機関は多岐にわたります。農林水産省、環境労働省(動物愛護法)、法務省(動物の法的解釈)、文部科学省(獣医学教育体制)などが担当しています。各省庁は相互に連携しながら環境整備を図ります。
獣医療全般については、農林水産省の権限と役割が最重要です。(リンク1)
 
 
 言うまでもなく、獣医療は法律で厳密に規定されている業務です。
獣医師は、獣医師法に則って義務と権利を行使すべきと定められます。
獣医療は、獣医療法に則って適正になされるべき治療内容が規定されています。
 獣医療と獣医師を法的に管轄する最高機関が農林水産省です。各地方には、農政局(農政事務所)およびその支所などが置かれています。地区によって小動物担当部署の名称は異なるかも知れません。
 適切な獣医療を推進するために、獣医師の環境整備、監視、監督、指導、教育等を遂行しています。
 その一環として、獣医師の行政処分などの重要事項を関連部署に通達し、指導の徹底を図っています。
 通達先は、都道府県の獣医療管轄部署や獣医師団体(特に(社団法人)日本獣医師会)などが対象です。(リンク2)
 
 残念なことに、このような重要な行政機関の内容について、私たち飼い主はあまり熟知していないのが実情です。
公開されている有用な情報を収集して医療に活用することは飼い主の果たす責任の一つだと思います。
 
 医療過誤や悪質な獣医師の被害に遭った場合、その事実報告や相談の受け皿は決まっていません。そのため、飼い主は相談可能な様々な団体や公的機関を探して奔走します。
 こうした現状を見るにつけ、受け皿となるべく行政機関の役割が大きいと痛感します。
 
 それではその行政機関は具体的にどのような方針で運営され、どのような対策を講じているのでしょうか?
 その現状を知ることは、今後の獣医療の方向性を考える上で重要だと考えます。
 
 獣医療行政の動向として、平成16年10月1日に農林水産省消費・安全局衛生管理課に小動物獣医療班が新設されました。計3名の担当者で活動を開始しており、大変重要な任務です。この機関の詳細は獣医師会雑誌に記載されています。(リンク3)
 
 上記小動物獣医療班発足後、農林水産省は、平成17年01月21日(金)、第1回小動物獣医療に関する検討会を開催しました。
その後、4月12日(火)第2回、5月24日(火)第3回、6月14日(火)第4回の同検討会が開催されました。(リンク4)
今後の獣医療に重要な指針を提示するものと期待されます。
平成17年月7月29日に最後の検討会が開催され、概要がプレスリリースされています。(リンク5)
 
 検討会議事録からは、獣医療の現状と問題点が浮き彫りにされています。
 特に、獣医師の民法上の違法行為(獣医療過誤、薬事法違反(ネット販売など)、各種注意義務違反、等が頻発し、さらに、獣医師道に著しく背反する医療行為が横行している実態が報告されています。
 農林水産省は、「獣医師免許を与える権限」を持つと同時に、「獣医師法に違反する獣医師を罰する義務」もあります。
 しかし、獣医師が明白な獣医療ミスを繰り返し犯し、飼い主との民事裁判で敗訴をしても、これまで行政処分は全くされず、被害者は泣き寝入りするしかありませんでした。
 最近、被害者数の増加や民事裁判数の増加が顕著となった背景を考慮し、【獣医道審議会】は、獣医療行政史上初めて、民事事件敗訴の獣医師を処分しました
(リンク8)。
この事実は大変画期的な出来事です。
農林水産省HP
農林水産省への質問と回答 (@、A)
 
私は以上の考えから、獣医療の現状に関する意見と質問を農林水産省宛てに提出しました。
ご回答を頂戴することができましたので、ここにご紹介致します。ご参考にしてください。
 
『ご回答いただきました農林水産省には厚く御礼申し上げます。』
 
質問者: 獣医の医療ミス 管理人
回答者: 農林水産省  
(文言は原文の通り)
 
@ 獣医療と医療過誤に関する意見と質問 (2004年12月)
 
質問先担当部署: 農水省生産局畜産部消費・安全局衛生管理課獣医事班獣医療係
 
主旨:獣医療過誤の現状と対策に関してご意見をいただきたくお伺い致します。
 
「私は医療過誤で愛犬を失ったことを契機に2年前から個人HP「獣医の医療ミス」を運営しております。
HP趣旨は、獣医療の問題点を検証し、飼い主と獣医師への注意喚起と医療レベルの向上を目的としています。
 
当HPの性質上、獣医療過誤被害と考えられる相談が多くの飼い主から寄せられます。そして明らかに許容できない治療や詐欺行為が横行している現状を危惧します。
ここ数年、獣医療過誤裁判は増加しております。すでにご存じのように本年5月にはスピッツ真依子ちゃん裁判で原告が勝訴しました。(H16. 5.10 東京地方裁判所 平成15年(ワ)第16710号 損害賠償請求事件)。明らかな医療過誤に対して裁判で争うことは、獣医師の責任や生命の尊厳を考える上で重要な方法の一つであると考えます。
 
しかしながら、一件の民事裁判結果や医療過誤を問うHPの意見主張だけでは、繰り返される医療過誤の前には無力感を覚えます。
頻発する医療過誤にどのように対策をたててゆくことができるか、また飼い主はその被害にどのように対処できるのか、その解決のために獣医師会や農林水産省のお考えと行動が決定的です。飼い主としてはそれぞれの対応に強く期待しております。
とりわけ、獣医療を専門的に担当なさっている貴課では、あらゆる分野からの情報が集中していることと思います。
つきましては獣医療の現状を教えていただきたいことと、また、どのようにしたら獣医療過誤を減少させることができるのか、という疑問から、勝手ながら以下のご質問を致したいと存じます。」
 
質問) 
A:農林水産省に寄せられる飼い主の意見の現状と意義について
 
 飼い主は農林水産省が獣医師を管理監督する部署と考えています。そこで、獣医療全般に関して、さらには獣医師への監視、指導、注意、罰則を希望して貴課に様々なご意見を提出していると聞いております。
 
Q1.貴課には飼い主から年間何通程度のご意見、ご相談、要望書等が寄せられていらっしゃいますか?
またどのような内容が多いのでしょうか?
 
Q2.意見や要望に対してどのようにお応えなさっていらっしゃいますか?
たとえば過誤の多発する獣医師への指導などは可能でしょうか?
 
Q3.飼い主が管轄部署に意見を提出することについてはどのようにお考えでしょうか?
 また、飼い主が貴課に要望などを提出する際の注意事などがありましたらお教えください。
 
B:悪質または医療過誤を繰り返す獣医師への対応について
 
 獣医師法や獣医師の誓いには医療への責任が明確に定義されているにもかかわらず、かなり悪質な医療過誤が後を絶ちません。
 獣医師が医療過誤裁判で敗訴しない限り、医療過誤の存在も否定されることは被害者としては承服しがたいことです。
獣医師処分内容を見ますと、麻薬、殺人、詐欺、薬事法違反などでは医業停止など行政処分が行われていますが、医療過誤裁判敗訴では処分例はないように思います。
 
Q4.現に発生している多くの医療過誤に対して、貴課ではどのような方針または対策をお考えでしょうか?
 
Q5.獣医療を専門に扱う貴課から見て、私たち飼い主が改善すべき点などがありましたらご意見をお聞かせ下さい。
 
以上です。
支障のない範囲でご意見を頂戴できれば幸いに存じます。
 
 
回答)
お寄せいただいたご質問についてお答え致します。
 
Q1
飼い主と思われる方々から私どもへ電話やお手紙などで、主に診療の内容や費用に関する問い合わせや相談が寄せられています。今年度は24件のご相談を受けています。
 
Q2及びQ3
獣医師法、獣医療法に関するものであった場合は、法律に定められた内容を説明させて頂き、獣医師等が獣医師法、獣医療法に違反している疑いがある場合、不適切な獣医療を提供しているような獣医師に対しては必要に応じ、都道府県と連携して、指導等を行っております。
そのため、獣医療に関する情報を幅広い方々からいただくことは大切だと考えております。
なお、獣医師と飼い主の間で診療費や診療方針等について十分な合意がなされるように、
(社)日本獣医師会等の獣医師団体がインフォームド・コンセントの徹底を推進しています。このことは獣医療法に基づき策定された「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」の中で示しております。 (リンク6)
 
Q4
 診療を業務とする獣医師は、免許取得後も新しい技術の習得等のために臨床研修に努めるよう獣医師法に規定されております。また、獣医療の高度化等に適切に対応できるよう、獣医師が参加できる研修会、講習会などを開催する事業も行っています。
 
Q5
 獣医師との十分な意見交換を通じて、診療方針等をよく理解、納得された上で治療を受けられるよう、飼い主の方々にもご協力いただきたいと思います。
 
農林水産省
 
 
A 獣医師の資格と罰則に関する意見ならびに質問 (2005年9月)
 
質問先担当部署:獣医事審議会免許部会 (リンク7)
 
「ペット医療への社会的関心はここ数年で急速に高まっています。
農林水産省におかれましても、本年小動物獣医療に関する検討会が開催され、委員会答申が出されたことは大変画期的で喜ばしいことと受け止めています。獣医師研修制度の開始を心待ちにしています。
 
さて当HPには多くの飼い主から獣医療被害の意見が寄せられています。悪質な獣医療ミスが後を絶たず、獣医師の不誠実な対応によって訴訟に発展するケースも少なくありません。ミスを繰り返すリピーター獣医師も大きな問題です。
治療能力や倫理面に問題のある一部の獣医師の存在は、これを放置した場合、獣医療全体に対して大きなダメージを与えます。当HP掲示板においても、飼い主のみならず、建設的な意見を持つ獣医師をも執拗に誹謗中傷する獣医師がいます。
動物の生命を冒涜し獣医療の発展を妨害する獣医師は、獣医療の将来に暗雲をもたらす存在となります。
高い資質を備える獣医師と良好な獣医療を確保するためには、問題のある獣医師への抑止力が必要であり、その方策として悪質な獣医師に対する適切な指導または罰則が必要不可欠と考えます。
公的機関として、農林水産省獣医事審議会で獣医師に対する行政処分が審議されていることと理解しております。
獣医師の資格について、獣医師法で「免許を与えない場合」として下記条項が記されています。
【第5条4.前号に該当する者を除くほか、獣医師道に対する重大な背反行為若しくは獣医事に関する不正の行為があつた者又は著しく徳性を欠くことが明らかな者】
この法律は獣医師の資質を問う重要な条項であると思われます。法の精神に則った厳正な法律運用を期待しております。
 
悪質な獣医師に対する罰則に関連して、以下についてお伺い致します。」
 
質問1. 【行政処分の対象者として、獣医療裁判敗訴の獣医師が含まれる可能性はあるでしょうか?】
質問の趣意:
上記獣医師法条文は、獣医師にふさわしくない者を排除する指針であると思います。
実際、獣医師が法的刑罰(薬事法違反、麻薬法違反、青少年条例違反、等)を受けた場合に、行政処分を受けています。
一般的な法的刑罰には民事罰(医療裁判で敗訴して過失を認定される場合)も含まれています。
刑罰に優劣や差を設けるのはなじまないと思われ、また悪質な獣医師を罰則するという指針に照らした場合、獣医療裁判で民事罰が確定した獣医師への行政処分も妥当だと考えます。
 
質問2.  【獣医師会や県または農水省からの指導に一切従わない獣医師に対する行政処分は可能でしょうか?】
質問の趣意:
悪質な医療ミスや不誠実な対応に遭った飼い主の一部は、獣医師を管轄する各種機関に被害届を提出しています。関係部署は獣医師に対して適宜指導や勧告をしていますが、その指導勧告を完全に無視する獣医師もいます。反社会的態度を示す獣医師は明らかに獣医師道に反し、よって何らかの処分が必要であると考えます。
 
質問3.  【インターネット媒体を用いた獣医師の悪質な情報発信への規制は可能でしょうか?】
質問の趣意:
獣医療に関する情報伝達としてインターネットは有効な手段です。多くの獣医師が動物病院の宣伝や各種情報の提供に用いています。他方、意図的な虚偽の情報や、他人への悪意に満ちた誹謗中傷なども安易に行われています。現時点で、電子媒体情報の真偽の確認は困難な状況です。しかし、悪質情報を発信する獣医師の所在が判明する場合は、何らかの規制をかける必要があると考えます。行政処分の対象に含めることをご検討いただきたく存じます。
 
以上です。
突然の問い合わせで恐縮ですが、貴部会のご判断についてご意見を頂戴できれば幸いです。
     
 
(回答)
 お問い合わせありがとうございます。
 
・質問1 行政処分の対象者として、獣医療裁判敗訴の獣医師が含まれる可能性はあるのでしょうか。
 
回答1
獣医師の免許の取消し及び業務の停止の行政処分の対象については、獣医師法第8条第2項に規定されており、「罰金以上の刑に処せられた者」の他、「獣医師道に対する重大な背反行為若しくは獣医事に関する不正の行為があった者又は著しく特性を欠くことが明らかな者」や「獣医師としての品位を損ずるような行為をしたとき」も該当します。「獣医師道に対する重大な背反行為」や「獣医師として品位を損ずるような行為」とは、獣医師に求められる職業倫理に反し、国民の獣医師に対する社会的評価を損なう行為を意味しています。獣医師の行った行為が獣医師道に対する重大な背反行為や品位を損ずるような行為に該当するか否かについては、当該獣医師の行為全体を総合的に判断することとしています。
御質問の損害賠償などの民事裁判で敗訴したという結果のみをもって、自動的にこれらに該当するものではありませんが、獣医師道に対する重大な背反行為や獣医師として品位を損ずるような行為をしたと判断される場合には、獣医事審議会の意見を聞いた上で、行政処分の対象となりえると考えます。
 
 
・質問2 獣医師会や県または農水省からの指導に一切従わない獣医師に対する行政処分は可能でしょうか。
 
回答2
 獣医師が、獣医師法や獣医療法の規定に違反し、都道府県や農林水産省から指導を繰り返してもその指導に従わない場合、その内容に応じて刑事告発や行政処分を行うこととなります。
 
 
・質問3 インターネット媒体を用いた獣医師の悪質な情報発信への規制は可能でしょうか。
 
回答3
 人の名誉を毀損するような誹謗中傷を行った者は、刑法第230条名誉毀損罪により、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処せられると規定されています。
罰金刑以上の刑に処せられた獣医師は行政処分の対象とされます。また、虚偽の情報を一般の方に提供することは、不当景品類及び不当表示防止法により規制されています。
 
 
 今後とも小動物獣医療にご理解ご協力の程、よろしくお願いいたします。
 
農林水産省
 
 
関連 リンク
(本文中のリンク1、2、3、4、5、6、7、8)
リンク(1)  農林水産省                                  
組織案内・農林水産省の仕事
リンク(2)  獣医師に対する行政処分について
農林水産省消費・安全局衛生管理課長  15消安第3609号 平成15年11月26日
リンク(3) 農林水産省消費・安全局衛生管理課に設置された小動物獣医療班
平成16年10月1日をもって,農林水産省消費・安全局衛生管理課に小動物獣医療班が新設され,担当課長補佐,小動物衛生係長及び係員1名の計3名が配置され,活動を開始したところである.本稿では簡単に,小動物獣医療班が新設された経緯及びその所掌事務について概説する.
 
〒100−8950 東京都千代田区霞が関1−2−1  農林水産省消費・安全局衛生管理課小動物獣医療班   FAX:03−3502−3385
リンク(4) 農林水産省 小動物獣医療に関する検討会
第1回   配布資料   議事概要    議事録
第2回   配布資料   議事概要    議事録
第3回   配布資料   議事概要    議事録
第4回   配布資料   議事概要    議事録
第5回   配布資料   議事概要(未) 議事録
第6回   配布資料   議事概要(未) 議事録
 
・小動物獣医療に関する検討会報告書   概要[PDF]  全文[PDF]
リンク(5) 農林水産省 小動物獣医療に関する検討会報告書について
検討会について委員の総括書
リンク(6)  「獣医療を提供する体制の整備を図るための治療指針」
獣医療法(平成4年法律第46号)第10条第1項の規定に基づき、獣医療を提供する体制の整備のための基本方針を次のとおり定めたので、同条第5項の規定に基づき、公表する。平成 12 年 12 月 14 日農林水産大臣 
リンク(7)          獣医事審議会                  ・        
獣医事審議会議事録 (PDF)
リンク(8)  農林水産省 プレスリリース  H20年5月30日   ☆NEW☆
獣医師法第8条第2項の規定に基づく獣医師の処分について(業務停止3年)
平成20年5月29日付けで農林水産大臣により次の者の処分を行った。
 
氏名 鳥吉英伸(41歳)
住所等 多摩センター動物病院(東京都多摩市)
処分内容
業務停止3年(獣医師法第8条第2項第3号。平成20年6月9日(月)より行政処分効力発効)
 
事件の概要
鳥吉英伸は、詐欺行為を働き診療報酬を詐取するとともに、罹患動物に対し適切な治療行為を行わないどころか、死に至らしめたものである。当該獣医師の行為は、獣医師に課せられた倫理的又は道徳的な職責に大きく反する行為である。  
 なお、当該獣医師に対しては、民法(明治29年法律第89号)第709条(不法行為)に基づく損害賠償責任を負うとの判決が下されている。
刑事処分 なし
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Last Updated: 2008/6/17
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